ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

編集長・記者 宮崎信行 政治ジャーナリスト(元日本経済新聞記者)

◎農業者戸別所得補償の恒久法制化へ、自民党案、民主党案両案が審議入り 首相「減反廃止」の二枚舌が発覚


 さあ、平成26年3月27日(木)、日本農政史の歴史的な日となりました。

 ついに、農業者戸別所得補償直接支払いの法制化がスタート。

 政府・自公の2法案と、民主党・生活の党・社民党提出の4法案が審議入り。

 安倍首相は「5年後をめどに農業者へのていねいな説明をしながら、生産調整の見直しを図っていく。なお、施政方針演説では、一般の国民にも分かりやすいよう『減反の廃止』という表現をした」と答弁。ぬけぬけと嘘をついていたことを認め、首相の二枚舌が発覚しました。

【2014年3月27日(木)衆議院本会議】

 民主党提出の「農業者戸別所得補償法案」(183衆法26号)が議題になりました。

 同時に、政府が提出した「担い手の経営安定のための交付法案」(186閣法49号)「多面的機能促進法案」(50号)

 民主党などが提出した「ふるさと維持のための農地・水共同生活促進法案」(186衆法6号)「ふるさと維持のための中山間地などの維持法案」(7号)「ふるさと維持のための環境保全型農業交付法案」(8号)も審議入り。

 自民党側は安倍首相、林農相、 民主党側は大串博志さん、鷲尾英一郎さん、玉木雄一郎さんがひな壇に座りました。

 林農相は趣旨説明で、「農業直接支払いの法制化のための2法案だ」と語り、直接支払いの法制化作業入りを宣言しました。




[画像]政府案を趣旨説明する林農相。

 玉木雄一郎さんは趣旨説明で、「政府与党案は麦(ムギ)、大豆だけだが、民主党など案では、米(コメ)も恒常的にコスト割れしているとの認識のもと、米も対象にする」とし、民主党案ではコメも対象にすると宣言しました。

 玉木さんは、政府・自民党農政と、民主党法案の違いについて、

 自民党はペナルティー減反
 民主党は選択型減反
 
と表現しました。


[画像]民主党・生活の党・社民党の4法案を趣旨説明する玉木雄一郎さん。

  質疑では、自民党斎藤健農林部会長が「基本的な哲学の違いを感じる。今後の我が国の農業は意欲ある農業者への農地の集約が国民の利益につながる」とし、農業を産業と位置付ける路線を鮮明にしました。林農相は「産業政策と地域政策を車の両輪にするための多面的効能支払い法案であり、構造改革も推進する」として、土地改良などの農業構造改善事業利権への配慮を示しました。なお、斎藤さんは民主党に質問しないという、さわやかさに欠ける行為をしました。

 民主党を代表して寺島義幸さんが質問。

 「安倍総理はこの場で、減反を廃止するのか、継続するのか、明確に答弁してほしい」と要求。


[画像]質問する寺島義幸さん。


[画像]寺島さんの「減反廃止か維持かを明確にしてほしい」という質問に苦渋の表情を浮かべたように見える安倍首相(右)

 これに対して、安倍首相は
 「5年後をめどに農業者へのていねいな説明をしながら、生産調整の見直しを図っていく。なお、施政方針演説では、一般の国民にも分かりやすいよう『減反の廃止』という表現をした
 
 と答弁。ぬけぬけと嘘をついていたことを認め、首相の二枚舌が発覚しました

 安倍首相が嘘をついていたのは次の部分。

[当ブログ内エントリーから安倍首相の第186通常国会の施政方針の引用はじめ]

 地方経済の中核は、農林水産業です。おいしくて安全な日本の農水産物は、世界中どこでも大人気。必ずや世界に羽ばたけるはずです。

 農地集積バンクが動き出します。農地を集約して生産現場構造改革を進めます。更に、四十年以上続いてきたコメの生産調整を見直します。いわゆる減反」を廃止します。需要のある作物を振興し、農地のフル活用を図ります。

[引用おわり] 


[画像]答弁する大串博志さん。

 大串博志さんが答弁に立ち、「民主党時代の(予算措置の行政指導である)農業者戸別所得補償を恒久法制化するものだ」と法案の意義を示したうえで、「民主党政権で、全体の6割である500ヘクタール未満の農家の農業所得は確実に回復した。これがファクトだ」と念押ししたうえで、「今回の法案は日本の農業の重要な岐路になります」として、衆・農水委での徹底審議を求めました。

 鷲尾英一郎さんは「政府案は多面的機能を全面に出しているが、民主党など案はそれは副次的。あくまでも地域コミュニティの再生で、柔軟な交付が可能な、現場の声に配慮したものになっている」と答弁し、政府案による「多面的機能」の美名の下の農業土木利権をけん制しながら、集落営農をやりやすいようにする民主党農政を説明しました。


[画像]答弁する鷲尾英一郎さん。


[画像]演台にペーパーは置きながらも、目を落とさずに、ノー原稿で、初答弁する玉木雄一郎民主党衆議院議員、2014年3月27日(木)の衆議院本会議、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット

 結いの党の林宙紀さんの質問に対して、答弁に立った玉木雄一郎さんは「ご質問をいただき、ありがとうございます。せっかくなので少し時間をかけて答弁させていただきます」と語り、ノー原稿で答弁デビュー。玉木雄一郎衆議院議員の本会議答弁は2009年8月30日の初当選以来初めて。

 玉木さんは「民主党政権では集落営農が年8%増えていたが、自民党への政権交代後、2013年の調査では、集落営農が100減っている。これは農家が自民党農政に不安を感じて集落営農を止めたことにほかならない」と答弁しました。

 法案提出者でもある生活の党の畑浩治さんも質問しました。農林水産委員である維新の村岡敏英さんも質問。公明党からは樋口尚也さんが質問しました。

 衆・農林水産委員会は、今国会は法案の数は少なく、残り3か月間はこの6法案をめぐる一本化も含めた修正協議などになりそうです。

 政府案には「農業者団体等による事業計画の作成・実施」という文言が含まれています。当然、JAのことでしょう。これではまったく意味がありません。

 静かな構造改革に向けて、歴史に残る農林水産委員会となります。

 何より大事なのは、国会が法律をつくること。自民党は正々堂々と民主党に向き合うべし。

 ◇

 この日の衆議院本会議では、予算関連法案の上がり法案の採決が行われました。

 今年度は先週すでに予算が成立しています。議員立法

「水循環基本法」(186参法3号)


「雨水利用促進法」(186参法4号)
が全会一致で可決し成立しました。次に、

貿易保険法改正法案」(186閣法17号)


内閣府設置法を改正し総合科学技術・イノベーション会議を設ける法案」(9号)


「森林国営保険法改正案」(43号)


「義務教育教科書無償化法改正案」(41号)


「次世代育成支援法改正案」(31号)


「パートタイム労働法改正案」(32号)


「NHK予算案」(186承認1号)

が可決し、参院に送られました。

 民主党は、「教科書」と「NHK」の2案に反対しました。

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