ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

編集長・記者 宮崎信行 政治ジャーナリスト(元日本経済新聞記者)

あわや国会崩壊、マニフェスト崩壊を救った参院自民党の2議員 礒崎陽輔さん、宮沢洋一さん


[写真]参議院自民党礒崎陽輔さんと宮沢洋一さん(各々、自民党ホームーページと宮沢洋一さんのブログから)

【参・予算委 2010年11月22日(月)の午前中の一般質疑と午後の集中審議】

 第176臨時国会(2010年10月1日~12月3日)について、書きそびれた一本を大晦日にアップします。

 ねじれ国会という事で、参・予算委員会補正予算提出前から基本的質疑や集中審議が多く、NHK国会中継が何度入り、かなり国会に興味を持つ人が増えたようです。ただ、「予算委員会なのに予算の審議をしていない」「ヤジが酷すぎる」という世論があり、「ヤジ」に関しては全く同意しますが、審議の内容に関しては、比較的良かったと思います。つまり、今までの国会と比較して良かったという意味です。こんな中、補正予算案提出後の一般質疑(総理は出席せず、テレビ中継はない)の中で、あわや「国会崩壊」「マニフェスト崩壊」となりかねない事態を、参院自民党の議員が救ってくれた場面がありました。

 一人は、礒崎陽輔・予算委理事です。自治省出身で、第21回参院選の大分選挙区で、全国的に珍しく民主党社民党選挙協力に失敗し、別々に候補者を立てしまい、漁夫の利を得て初当選したのが、礒崎さんです。

 公明党石川博崇さんが法務行政について質問したかったようですが、この朝、柳田稔法相が辞任。そこで、「法務大臣(としての答弁)は、仙谷さんということでよろしいのか」と、法相を兼務することになった仙谷由人官房長官に確認しました。この国会で問責決議をされることになる仙谷さんですが、「朝8時に菅総理が柳田大臣から辞表を受け取った」とし、「総理から『お前(仙谷さん)が法相をやってくれ』と言われた。持ち回り閣議で、(国務大臣として天皇陛下から認証された後、○○大臣としての所掌事務を決める)補職辞令の手続きがされる」と述べました。ところが、繰り返しの確認に対して、「その手続き(補職辞令)が出来ているか分からない」。石川さんが「今、この場では、仙谷官房長官が法相なのか?」と畳みかけると、補正予算成立を急ぐ仙谷さんは、「私の生の経験では、総理からは伝えられいるので」法相として答弁できるという珍説を披露。すると、礒崎理事は、「そりゃダメダメ、ダメダメ、ちゃんと確定しなきゃダメですよ」と委員席の前田武志さんに答弁を止めさせるよう、歩み寄りました。礒崎さんは「誰が大臣かなんて、国会においてイチバン大事なことじゃないですか!」。

 この後、内閣官房の職員から、仙谷さんにメモが入ったようで、「今メモが入ったところでは、補職辞令(の決定)が持ち回り閣議で終了したということです」と語り、石川さんの再度の確認の後、仙谷法相としての答弁が始まりました。

 とはいえ、もし、補職辞令前に、法相でない人が法相として答弁していたら、議事録削除どころですまない大混乱でした。攻勢を強めていた参院自民党の礒崎さんがわざと見て見ぬふりをして仙谷さんに答弁させておいて、後から問題視していたら、参院自民党の戦術としては、よかったかもしれません。が、それは礒崎さんが言うとおり、「国会においてイチバン大事なこと」ができていない“国会崩壊”です。与党も野党も関係ありません。礒崎さんは自治省消防庁勤務もあったようですが、“災害”がおこるまえに、しっかり火の用心してくれました。

 この後、午後の審議では、宮沢洋一さんが質問に立ちました。宮澤喜一元首相の甥(参院議員・自治事務次官・広島県知事を務めた宮澤弘さんの息子)で、宮澤首相の政務秘書官を経験し、大蔵省を辞めて国会議員になった人です。

 政府の行政刷新会議事業仕分け第3弾前半「特別会計仕分け」を取り上げ、「貿易再保険はとても大事ですが、貿易再保険特別会計から独立行政法人に移せ、という仕分け結果が出ました」と大畠章宏経済産業相に質問。このときの宮沢さんの口ぶりは、貿易再保険は大事なのに、大丈夫なの?という風情。

 大畠さんは「ネクシー」という聞き慣れない言葉を使いながら、「独立行政法人日本貿易保険、ネクシーを中心に貿易再保険は続けていきます」として、どうやら「ネクシー」というのはこの独立行政法人の略称のようですが、貿易再保険は「維持することができました」と堂々と答弁。

 ここで宮沢さん、ニヤリ。

 「あれ、大臣、もっと怒るのかと思っていましたよ。ホントウにそれでいいんですか?昨年の(09)マニフェストには、『独立行政法人の実施する事業について、国が責任を負うべき事業は国が直接実施することとして、全廃を含めて抜本的な見直しをする』と書いてありますよ。独法なんて、基本的になくせ!って書いてあるじゃないですか」として、貿易再保険はすべて国が責任を負い、「ネクシー」は廃止すべきではないかと論を進めました。

 宮沢ファミリーのクレバーで嫌みなところは、私は大好きです。

 大畠さんは虚を突かれたようで、民主党政調会長・国家戦略大臣の玄葉光一郎さんがフォローの答弁に立ちました。宮沢さんは「ともかく独法をなくせというマニフェストであなたは当選したんだから、それに逆行するという結果が出たら、徹底的に大臣は抵抗しなければいけない。私は仕分けの第1弾、第2弾は決算を対象として、それなりに成果があったと思う。しかし、この秋に行われている第3弾は、自分たちのつくった予算を仕分けをするという妙なことが行われいてる。情けない話であります。それだけ指摘をして、質問を終わります」。

 事業仕分け第3弾が民主党が組んだ予算ベースで議論されたことについては、農水副大臣篠原孝さん、総務政務官逢坂誠二さんからも異論が出ました。玄葉政調会長は、第22回参院選を使って、マニフェストの修正を試みましたが、選挙結果が惨敗だったので、それもかないませんでした。岡田克也幹事長は、次の予算編成を機会にマニフェストの進行状況について、国民に説明し、修正するスケジュール感を持っています。

 大畠さんがなぜ、「ネクシーは残りました」と自負したのか、その答弁の深層は分かりませんが、事業仕分け第1弾第2弾は評価しながら、マニフェスト逆行に気付かなかった大臣をたしなめ、事業仕分け第3弾は批判する。解散がない参議院議員の良心。

 参院自民党にもっと良識を求めたいと考えるし、来年の国会中継では、ヤジも気になりますが、「衆議院だから総理は解散をちらつかせているな」「参議院だから大臣は問責決議をおそれて答弁しているな」という違う視点でテレビを見るという有権者の成熟ぶりがあればいいなあ、と期待しています。
 

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